| あの頃ペニー・レインと
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監督:Cameron Crowe 出演:Billy Crudup, Kate Hudson, Patrick Fugit,Philip Seymore Hoffman, Frances McDormand |
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アカデミー賞にもいくつかノミネートされて巷でも評判のいい『あの頃ペニー・レインと』をやっと見た。帰りにはいきつけのロック・バーへ寄って、まあ、イーグルスとS&Gでも聞くとするか、でもバーテンの西やんはきっとニール・ヤングとレイナード・スキナードをかけちゃうだろうな、なんて、そこまで予定までしていた。 ところが、だ。どこかで、こういう評判のいい映画は気をつけろ、という本能的な危険信号は受け取っていたのだが、ここまでとは思わなかった。アリソン・アンダースは名作『グレイス・オブ・マイ・ハート』を編集中にEメールでキャメロン・クロウと文通していた(アリソンが相談していたらしい。DVDにオマケで入っている)。そんなことの前からキャメロン・クロウは15歳でローリング・ストーン誌のライターになった天才児だ。でも、やつはストーン誌を敵対視するイーグルスと仲良くやれたから、とものの本には書いてある。『初体験リッジモント・ハイ』以後、ハリウッドでもうまいことやってる。まったく、混乱させるやつだぜ。 なんにせよ、一つだけはっきりしていることがある。この映画を見た後に、美味い酒飲んでロックを聞こう! なんて気には全然ならなかったんだよ。ばかやろ。 イギリスの70年代バンド再結成話『スティル・クレイジー』を見たときに友人と話し合ったことがある。音楽映画って、話の筋とか映画の出来とかとは関係なく、心にズキーンとくる瞬間があるんだよな、とかいったことだった。『スティル・クレイジー』も見ている間はあまり感心しなかったが、最後のコンサート・シーンで、ゴーン、ときた。除夜の鐘だ。映画はこれで終わりだ。よけいな事など語る必要もない。ギターソロだけでいい。この歓声だよ。というわけだ。フォリナーのミック・ジョーンズの書いたオリジナル曲はどうも80年代っぽく聞こえたのだが、すべてがふきとんだ。煩悩を吹き払う電気音。これぞ、ロック。OKだ。内田裕也じゃないけど。 それでいて、この映画はなんだ? 金はかかってる。たぶんスティル・クレイジー』の10倍は予算があっただろう。参考の為に購入したパンフレット(こいつもダメだ。なんだ、この中古レコード屋のオヤジ取材3連発ってのは!)にはサンセットのハイアット・ホテルの壁をぶち壊して昔の階段を復活させたとか書いてあったが、そういうことなのか? 映画の中の架空バンド「スティル・ウォーター」のメンバーがいいヤツだったことは分かった。しかし、肝心のやつらの音楽は観客の心に響いたか? いいや。まったくゼロだ。最初のライブのシーンで、観客席ではなくステージ裏で聞くように音響を再現していたのには感心したが、音楽的な聞かせどころは皆無だった。客は最初から最後まで熱狂していた。そうだっけ? 昔のロック・コンサートって、もっと醒めてなかったかい? キッスやエアロスミス以前は、特に。 この映画を肉体的には不純でも精神的にはピュアな少女と、野心に満ち大胆なようでいて細心の注意を持って自分の将来をみつめていた早熟な少年の恋物語としてみるなら、まあ及第点は差し上げられよう。しかし、音楽映画としては落第だ。そして、自伝的映画としても。全体、この少年のどこがバンドメンバーに気に入られたのか、さっぱりわからん(子供を騙して良い記事を書かせようと考えたかもしれないが)。大人ぶった15歳のガキ。本当はドラッグにも手を出せない腰抜けだったんじゃないのか? 初体験のこともろくに印象に残ってない大物気取り? 最大の謎がなんでペニー・レインちゃんはこんな子供に優しくしたのか、だ。 たまたま良い位置に座る事ができた傍観者、それでいて音楽の本当の素晴らしさなんてわからなかったんじゃないのかい? キャメロン。最後にバンドのリーダーが言う陳腐なセリフだよ。ライターのなれの果て、かもしれないな。せっかく映画というフィールドで観客に音楽を(しかも映像付きで!)聞かせられるのに、結局最後にあんなせりふを言わせるのかい? はっきりいうけど、椅子からずり落ちそうになったぜ。 もうひとつ、ある。、ペニー・レイン役の少女を脱がせるならちゃんと意味をもたせろよ。さらりとした意味のないヌードなんて見るほうも嬉しくないんだよ! どうでもいいけど、その前からこの女の妙な鼻が気になってしょうがなかったんだが、あれはいったいなんだ? 整形か? ああ、70年代のゴールディ・ホーンは本当に可愛かったなあ。(それから、タイトルバックの昔のガラクタがなぜビデオ撮影なのか? 個人的記録?) 楽しかった部分もある。ニューヨークで出てきたホテルが、ふたつとも個人的に泊まったことのあるところだった。そういえば、グラマシー・パーク・ホテルは友人が「ロック好きなら」と推薦してくれたんだっけか。ローリング・ストーンのスタッフが写真で見たのとそっくり(なように見えた)だったのも笑えた。それにしても、あの時、君にビッグなチャンスを与えた当時の大人気バンド・イーグルスが、まったく登場しないのはどういうわけ? まさか、ソフトボールの試合で負けたからかい? |
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