Buenos Aires Zero Degree:The Making of Happy Together

監督:Kwan Pun-Leung,Amos Lee

 基本的にはビデオのキネコおこし。映画撮影時のコーディネイターらしき女性がロケ地を案内して歩く。ロケハン中の様子。ホームシックになったトニー・レオンのインタビュー。イグアスの滝へ向かう。病院の中年の看護婦。トニーの部屋を訪ねたレスリー・チェンにトニーは死んだのよ、と告げる。

 途中から、知らない若い男女が主演になる。
 ひとりで旅しながらテープに録音を続ける男。女にしつこく付きまとい声を聞きたいとテープレコーダーを近づけるが女は無視する。どうやら、これが本編からカットされたシーンらしい。女はタクシーから半身見を乗り出し、車は独立記念広場を回転しつづける。

 道にたたずむ老婆の後姿、交差点の真中で故障して止まっている車。ハイウエイの行き止まりだと告げられる監督。台湾へ戻って通訳の仕事をする、というスタッフ。

 10年前に訪れたブエノスアイレスの街も、同じように不思議な魅力をたたえていたっけ。なにか、文明社会から取り残されたような疎外感、いや、幸福感。フォークランド戦争を「聖戦」としてとらえる西欧分化とは裏返しの価値観。それでいて、農業も畜産も油田も世界に誇れる豊かな国。南極からジャングルまですべての季節を内包する大いなる空気感。ながらく好きな都市ナンバー1の地位を誇っていたはずが、ウォン・カーワイのおかげで汚されたような気になっていた。それでも、仕方がないか、やつも同じような空気を吸ってたんだな、と納得できた。

 直前に見たスタンリー・クワンの駄作とは段違いの風格が画面の端々からにじみ出る。しかし、売り切れだというこの香港映画祭の会場に『ブエノスアイレス』を見ていない観客はおいらひとりではないだろうかね。面白そうじゃん。(と、思ったら、この映画のいいシーンはまったく全部『ブエノスアイレス』には出てきませんよ、と宇田川幸洋氏に教えられた)  


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