黄金の眼
DANGER:DIABOLIK

監督:Mario Bava
出演:John Philip Law, Marisa Mell

♪ディーディーダー、ディーディーダ〜♪
 悩ましげにも、はたまた呑気にも聞こえるエンニオ・モリコーネ作曲、クリスティ(『続・復讐のガンマン』)唄の主題歌に乗って、ジャガーにしか乗らない大泥棒『黄金の眼』ことディアボリクがやってくる。演ずるはジョン・フィリップ・ロウ。なんだか無表情で人間味はないけど、カッコイイのだ。そういや『バーバレラ』でも似たようなコミック・キャラやってたな。

♪ディーディーダー。どうやら、このやたらお洒落な主題歌は怪盗ディアボリクが、恋人であるパツキン美人イヴちゃん(マリサ・メル)といちゃいちゃしているときにしか流れない。カットバックで紹介される、警察の追っ手を振りきるディアボリク! なんてカーアクション・シーンには、60年代エレキギターのテケテケBGM。で、彼女とイチャツクと……♪ディーディーダー、ディーディーダー、とくる。で、地下の秘密基地(これがまたビックリするほど豪華で60'sでカッコいい)に帰ったふたりは、それぞれ専用(!)のシャワールームでシャワシャワするわけだが(もちろんこの間も♪ディーディーダーは続く)、このシャワールームがとてもエッチでよろしい。見えそうで見えないようでいて見えたりするような気もするんだけどやっぱり見えないんだな、これが。う〜ん、じつに良い。

 で、ディアボリクを必至で追う刑事ジンコ(ミッシェル・ピッコリ)は、暗黒街の大物ヴェルモント(アドルフォ・チェリ)と、今までの悪事を忘れることを条件にディアボリクを捕まえるよう取引する。
 一方、ディアボリクは、イヴが誕生日のプレゼントに欲しがったイギリス大使夫人が保有する11個のエメラルド付きネックレスをなんとか手に入れようとお城に忍び込む。そこにはジンコが……。

 そんなことより、おい、ディアボリク、アンタ、彼女のためにしか泥棒しないわけ? 最初にジンコから奪った1000万ドルも、彼女と裸でイチャイチャするときにベッドに敷いてただけだし。ヴェルモントのワナにかかったイヴを取り返すために惜しげもなく宝石や現金を渡しちゃうし。警察に追われている途中でも、迎えに来たイヴと熱烈ディープキスしてるし。おいおい、そんなことしてるヒマあったら早く逃げろよ。

 そうなのだ、ディアボリクは、彼女を喜ばすためだけに「盗む」のだ。
 Why does he steal? for money? for thrill? for fun?
....No! for his girlfriend!
 なんと素晴らしいキャラクター。なんとすてきな泥棒カップル! ディアボリク&イヴに乾杯! だって、当局がディアボリクに100万ドルの賞金をかけると、「みんなの払った大切な税金をそんなことに使うとは許せん!」と脅迫状を送り、ブラフだとタカをくくっていた大臣の目の前で税務署を次々と爆破してしまうのだ。もちろん庶民は大喝采。古今東西、義賊にもいろいろいたが、こんなに気っぷのいい泥棒はちょっといない。ま、こんないい加減なストーリー展開も滅多にないといえるが。

 それにしても監督のマリオ・バーヴァは、プロデューサーから「007風にお色気たっぷりでよろしく」と頼まれたには違いないにせよ、いちいちカメラの前に水着ギャルをおいて、なめるなめる、の大サービス。さすが映像の魔術師! 毎度毎度、ギャルの太股やらお腹やらのむこうで悪人がボソボソやってるわけだ。主人公はいつも彼女とイチャついてるし。もちろん、女主人公のイヴちゃんも出て来るたびに、ミニスカ、ホットパンツ、前割れ、横割れミニドレスと連続悩殺衣装替え七変化! マリサ・メルちゃんのなんとなくポチャッとした脚がまたカワイイです。

 なんでも大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティス(『キングコング』)が用意した予算は300万ドル(当時のお金で約10億円!)、なのに節約派のバーヴァは、なんと40万ドルで作りあげてしまったんだそうな。ホンマかいな、としか思えないエピソードだけど、いつもイタリアで貧乏なホラー映画ばかり撮ってたからね……。クセが抜けなかったんだろうなあ。なぜか、リバイバルされた『唇からナイフ』にガッカリしたひとも、これなら大満足のイタリアン&フレンチごった煮テイストの60'sアクション・コメディ。お色気タップリでごんス。どっかビデオ化しないのかねえ。


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